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99年度以降、日本の高炉メーカーの上工程(高炉から熱延工程まで)の設備稼働率は、常時フル稼働に近い状況が続いてきました。
また、90年代後半以降、中国でも日本の自動車、家電メーカーが要求するような高品質の鋼材需要が成長しはじめており、現地メーカーが生産できない家電製品向けの耐指紋性電気亜鉛めっき鋼板、自動車用深絞り鋼板などの製品輸出も徐々に増加しています。
日本や欧米の自動車、家電メーカーが中国市場への生産移管を行っており、本国と同じグレードの品質の製品をユーザーが求めるようになっているためです。
これらの結果、2002年度以降、アジアの鋼材市場は二極化傾向がはっきりしてきました。
汎用グレードの鋼材に関しては、需給、経済動向などの変化が起こると、市況が大きく振幅する傾向は90年代と大きな変化はありませんが、日本メーカーが得意とする高級鋼市場に関しては、市況は安定的に推移しています。
日本の鉄鋼メーカーは、半製品供給による垂直分業、高級鋼需要の増加によって、構造的に高炉の稼働率が高まってきており、多少の需給軟化時でも稼動率維持のために鋼材の安値販売に走る必要性はなくなりました。
各社は価格重視の姿勢を崩しておらず、汎用材が大幅に下落する局面でも、高級鋼が高値を維持する状況が継続しています。
前段で述べた、日本とアジア諸国の垂直分業に関して、補足説明を行います。
日本の鋼材需給の安定化に大きく寄与しているものと筆者は考えているためです。
2000年以前の日本の鉄鋼メーカーによる鋼材輸出戦略は、貿易摩擦を引き起こしたことが多くありました。
たとえば、東南アジアが通貨危機に襲われた98年度は、日本メーカーは北米向けの輸出をエスカレートさせ、アンチダンピング提訴を受ける結果に終わりました。
そこで、貿易摩擦を起こさず、輸出を増加させる方法として、日本の高炉メーカーと海外の溶鉱炉を持たない鉄鋼メーカーとの下工程のみの長期契約が増加し、多少の需給悪化では鋼材輸出が落ち込む懸念が小さくなってきたのです。
特にJ社と韓国のGe社、Su社とCh社グループの長期契約などが注目されます。
J社は、韓国の高炉を持だない鉄鋼メーカー(Ge社など)やタイのグループ企業向けにスラブや熱延コイルなどを大量に供給する体制を整備し、構造的に輸出量を増加させました。
また、Su社は、薄板の設備集約に伴って、半製品であるスラブの設備余剰が発生しましたが、この大半を上工程設備の能力が不足している中国鋼織のグループ会社向けに供給する体制を構築しました。
国内では、Si社が、高炉を停止したNa社、薄板設備の集約に伴って、熱延コイルの能力が不足したSu社、電炉を休止したMi社、住友電気工業向けなどに半製品や熱延コイルを供給し、年200万トン、粗鋼生産量を構造的に底上げしたものと見られます。
このような垂直分業は、無用な競争を避けるだけでなく、日本の高炉設備の稼働率上昇、溶鉱炉を持たないメーカーの安定的な材料調達などの双方にメリットがあります。
回市況回復とコストダウン効果の相乗効果2002年度以降、世界的な鉄鋼需要の成長、鉄鋼メーカーの再編効果によって、鋼材市況は大幅な上昇局面を迎えました。
たとえば、熱延コイルの国際輸出市況は、2001年7月には、トン当たり180ドルまで下落しましたが、2002年の平均価格は同254ドル、2003年は同287ドル、2004年は同517ドルと回復基調を続けました。
一方で鉄鉱石、原料炭、プレート、合金鉄価格の上昇など材料費が大幅に上昇するなどの収益圧迫要因もありましたが、鋼材価格の上昇分が上回り、日本だけでなく、2004年度には、世界の鉄鋼メーカーが高収益を達成しました。
2004年度、2005年度、大幅な鋼材価格値上げをユーザーに提示した鉄鋼メーカーに対して、大手自動車メーカーの首脳陣は、「原材料コストの上昇は、製品価格への転嫁だけでなく、コストダウンで吸収してほしい」とコメントしていますが、日本の鉄鋼メーカーが04年度以降、過去最高益を達成した理由の1つには、1990年代より行ってきたコスト削減効果が非常に大きかったことも見逃せません。
裏返せば、現在、日本の鉄鋼業界は相当なコスト競争力を有しており、多少の景気悪化があっても業績は高水準を維持する潜在能力があると結論づけられるのです。
その根拠を見てみましょう。
多少の製品構成の変化もありましたが、継続的なデータ取得が可能となるSi社の財務諸表を用いて、同社のコスト構造の推移を分析しました。
一般的に経営分析では、外注費は変動費として分類するケースが多いのですが、鉄鋼業界にとって、下請け会社は操業を行っていくには欠かせない存在です。
よって、鉄鋼業のコスト構造を分析する場合、筆者は外注費を固定費として認識しています。
コスト水準がピークであった1991年度と2004年度を比較すると、固定費は約4500億円、粗鋼トン当たりで約1万5000円の低下となっています。
この間、同社の販売単価はトン2万2000円下落しましたが、固定費の削減効果だけで、トン1万5000円の収益改善効果があった計算になります。
Si社の場合、単独決算の従業員は出向者を含めて、1990年度には5万4062人でしたが、2005年度には1万9655人まで減少しました(ステンレスの子会社化などがあり、人員、生産などで多少データサンプルが異なります)。
一方、単独決算の粗鋼生産は1990年度が2899万トンでしたが、2005年度は3120万トン。
一人当たり粗鋼生産は1990年度が536トン、2005年度が1587トンと約3倍弱の労働生産性の改善を達成しています。
さらに変動費面では、材料費の大きな変動があったため、その効果を外部から試算するのは困難ですが、生産性改善、歩留まり向上などで、相当なコストダウン効果があったものと推定できます。
同業他社は、事業再編の結果、継続的なデータ取得が難しく、同様な分析は財務諸表からはできないものの、各社から公表されたコストダウン効果を積み上げると、ほぼ同様な合理化が進捗したと言えます。
今日の鉄鋼業の繁栄は、各社の懸命な経営努力の賜物であったことも忘れてはいけません。
ビルや橋などの建築物、自動車、家電製品、飲料缶、家具など、鋼材は我々の生活には欠かすことができない基礎素材です。
鉄鋼製品がなければ、近代的社会の発展はなかったかもしれません。
それ故、鉄鋼業は各国の基幹産業として、重要な位置を占めているのです。
鉄鋼製品は、①豊富な資源量、②安価な製造コストで生産が可能、③高い加工性、④リサイクルが容易、など多くの利点を有しており、他の金属や基礎素材に対して多くの優位性があります。
また、鉄鋼製品は、温度調節や成分調整、製造を工夫することによって特性が大きく変化します。
自動車を例にとって見ると、ボディ材は、薄くて加工性の高い鋼材が用いられますが、エンジンや駆動系の部品には、頑丈で熱や摩耗に耐える製品が使用されます。
ひと口に鋼材と言っても千差万別の製品があり、技術は日進月歩の勢いで進歩しています。
Si社の調査によると、鉄鉱石の可採埋蔵量は2320億トンです。
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